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最初にお断りしておきますが、ガイドライン工法は「国の基準」というわけではありません。建築に関わる国の基準は、ご存知のように「建築基準法」です。普通の木造住宅はもちろん、超高層ビルにいたるまで、日本の建築物はすべて「建築基準法」に基づいて建てられています。
この「建築基準法」が、1995年(平成8年)阪神淡路大震災で、多くの被害が出たことも影響して見直しが行われ、1998年(平成10年)新しい基準が出来ました。2000年(平成12年)には、同施行令(法律実施に当たっての細かい規定)及び国交省(旧建設省)の告示が出されました。同じ2000年には、関連する法律として、「住宅品質確保促進等に関する法」(いわゆる品確法。住宅性能表示や10年間の建築製造責任制度)が制定され、建築主である一般消費者が、安全で堅固な家を建てられるような基準ができたのです。
「ガイドライン工法」とは、国が定めた新しい建築基準法の求める水準をどのようにしたらクリアできるかを、独立法人・建築研究所や瓦メーカーの全国団体(全国陶器瓦工業組合連合会、全国厚形スレート組合連合会)、瓦工事業者の全国団体(一般社団法人全日本瓦工事業連盟)が、様々な科学的実験を繰り返し、自主的に決めた基準です。したがって、「国の基準」でありませんが、国の基準に準ずる工事基準といえましょう。
ここで、古い(1998年以前)建築基準法と、新しく制定された建築基準法の違いについて述べておきましょう。建築基準法の目的は、いうまでもなく、建築の安全性をしっかり確保することです。但し、この「安全性」に関して、古い法律と新しい法律では、「考え方」が違っています。古い法律の屋根に関する項目では、「安全を確保するためには、こういう材料を使って、このように施工しなさい」ということが細かく決められていました。このような基準を「仕様規定」と呼びます。具体的にいうと、次のように決められていました。
「屋根瓦は、軒及びケラバから2枚通りまでを1枚ごとに、その他の部分のうち、棟にあっては1枚おきごとに、銅線、鉄線、くぎ等で下地に緊結し、又はこれと同等以上の効力を有する方法で、はがれ落ちないようにふくこと。」 このような方法で屋根をふけば、建築基準法はクリアしたことになります。2000年以前の屋根工事は、この基準に基づいてなされていました。しかし、これだと、台風や地震にどれだけ強いかがよく分かりません。
新しい基準は、こうした工事のやり方、方法を細かく定めた「仕様規定」ではなく、「性能規定」による基準が設けられています。「性能規定」とは、材料や工法は問わないから、大きな台風や地震が来ても大丈夫な屋根の工事をしなさい、というわけです。一見自由に見えますが、屋根業界にとっては、実は、新しい建築基準の方がずっと厳しいのです。科学的なデータに基づいて、この屋根は、風速何十メートルに耐えられるか、震度いくつに耐えられるかの「性能」を持つ工事をしなければならないからです。もちろん、工事のやり方が細かく決められているわけではありませんから、その方法(モデル、ガイドライン)を示さなければなりません。「ガイドライン工法」は、台風の時の風圧や地震に対して、瓦がはがれて飛んだり落ちたりしないように、屋根業界が一体となって自主的に細かい基準を定めた「屋根の新しい性能を満足させるための工法」とご理解下さい。
現在は、「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」(ガイドライン工法)が確立され、台風や地震の時でも安心してお過ごしいただけるようになりました。
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